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今日の千菜 出雲蹴毬(いづもけまり )

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今日(きょう )千菜(ちな )

武漢肺炎(ぶかんはいえん )(わざわひ )(ひさし )しくなりぬ。(しか )れども(ひと )(こころ )( )なざらむに( )めてもの(さきはひ )( )( )( )何時(いつ )から( )(つね )(もの )になりたる防毒(ぼうどく )(めん )をば發展(はつてん )させ、良質(りやうしつ )なる吸氣(きふき )( )(ひと )(ほど )( )えたる(ちから )( )勝敗(しようはい )(きそ )遊戲(いうぎ )島根(しまね )縣民(けんみん )(なか )( )まれけり。( )( )出雲(いづも )蹴鞠(けまり )となむ( )ふ。

今日(けふ )學區(がくく )(ない )(たい )(かう )(せん )( )いても、千菜(ちな )何時(いつ )もの(ごと )味方(みかた )足手纏(あしでまと )ひと( )りぬ。( )(おもて )(とほ )りて( )(くす )( )何程(なにほど )( )( )みても、(みな )(おな )(やう )には(ちから )大幅(おほはば )( )がる心地(ここち )( )ざり。自他(じた )(とも )( )れを( )りぬれば(たま )(はこ )びも(おの )づから(みな )千菜(ちな )(まは )さざりつ千菜(ちな )( )かはざりつ( )りて( )きたり。

(をは )りて(たたか )ひには( )ちたり。本日(ほんじつ )(から )勝利(しやうり )たるを(おも )へば千菜(ちな )( )( )きたるが(ゆゑ )( )(なり )千菜(ちな )(あそ )ばざるが(ゆゑ )( )(なり )。さかしやかしこしや、あはれなる。( )(かへ )(みち )( )いて千菜(ちな )(とも )椿(つばき )(ある )きつつあり。

( )つと(をは )つた( )ア」

千菜(ちな )(かな )しき(らう )(ねぎら )(やう )椿(つばき )(こゑ )( )くに、千菜(ちな )(うべな )うて(かへ )す。椿(つばき )(もと )より(からだ )(うご )かす(あそ )びを(きら )うてある(もの )一人(ひとり )たり。千菜(ちな )競技(きやうぎ )(ちゆう )(あつか )ひを(おも )へば(こころ )(なか )(かよ )(ところ )( )らむと( )つ。

今日(けふ )(つら )かつたらう。( )んなん( )(いや )やん( )ア。一人(ひとり )( )らん( )一々(いちいち )( )ばんと( )(まま )したら( )えのに、(つぎ )( )(ことわ )りイ( )( )( )はんは(ひと )夫夫(それぞれ )やで」

「う、うん」

千菜(ちな )椿(つばき )(すす )めに( )(つよ )(うなづ )かざり。千菜(ちな )(こころ )(うち )には( )(うま )( )つて何時(いつ )( )(みな )(よろこ )ばれたしと、(たたか )ひに(から )みて( )きたしとは(おも )へど、( )めたしとは(おも )はざり。(いま )(ところ )(なに )( )はずに(おのれ )( )せて( )れる(みな )(こと )(うれし )しとぞ(おも )へる。(しか )(なが )ら、( )れを(いま )(となり )にゐる(とも )( )へば( )れを(きず )( )ける(こと )と爲ると(おも )へば進退(しんたい )(きはま )まりてなむ仕舞(しま )うたり。

( )(また )明日(あした )

千菜(ちな )(みち )(わか )( )にて(おの )づから椿(つばき )(はな )れては向後(かうご )善處(ぜんしよ )( )ても( )今日(けふ )(こと )( )(かへ )りたり。

(ただ )(いま )」と千菜(ちな )(いへ )(とびら )(ひら )けば二階(にかい )から足音(あしおと )(つよ )(いそ )いで( )りて( )たる(もの )( )り。

「おウ( )(かへ )り。一寸(ちよつと )此方(こツち )( )イ」

( )れば千菜(ちな )曾祖父(そうそふ )滿面(まんめん )( )みたり。

(なん )なん?」

( )えさかい此方(こツち )( )(はや )う」

千菜(ちな )曾祖父(そうそふ )には年頃(としごろ )溺愛(できあい )せられたれば、今日(けふ )(また )( )(こと )なむと豫期(よき )( )り。(くつ )( )次第(しだい )二階(にかい )( )がりて曾祖父(そうそふ )部屋(へや )這入(はい )りたり。(うなが )さるる(まま )部屋(へや )(ひと )(ところ )(すわ )らば曾祖父(そうそふ )文机(ふづくえ )( )かれたる(もの )( )りて千菜(ちな )( )す。

(これ )れは、( )(おもて )?」

千菜(ちな )( )たる( )(まさ )競技(きやうぎ )にて(もち )いらる(めん )なりたり。(しか )れども( )(めん )隨分(ずゐぶん )(とし )( )草臥(くたび )れて( )えたり。

( )うぢや。(ひい )( )(ぢい )ちやんが( )(わか )時分(じふん )使(つか )うて( )つた(もの )ぢや。其處(そこ )(ところ )( )つて( )イ」

( )( )はれて千菜(ちな )(おもて )口先(くちさき )( )きたる吸收罐(きふしうかん )( )( )たば(いささ )(おも )たし。

( )(まへ )( )はせた成分(せいぶん )( )ぜて( )たんぢや。(からだ )(ひと )夫夫(それぞれ )ぢやから(なう )

曾祖父(そうそふ )(にこ )やかに( )みたり

今日(けふ )學區(がくく )(ない )(たい )(かう )(せん )( )いては千菜(ちな )八面六臂(はちめんろつぴ )大活躍(だいかつやく )( )せたり。(はし )らば( )( )がれたる合圖(あひづ )( )けた軍用犬(ぐんようけん )(ごと )(かぜ )( )り、( )( )はば( )山羊(やぎ )(ごと )( )(なみ )( )長坊(のつぽ )(また )(した )( )(たま )( )(うろ )突破(つきやぶ )り。(こう )( )ぐる(たび )仲閒(なかま )からの(たた )への(こゑ )觀眾(くわんしゆう )(おどろ )きの(こゑ )とが千菜(ちな )(みみ )(くすぐ )(かほ )(あか )らしむ。

今日(けふ )(すご )( )自分(じぶん )( )(おもて )到頭(たうとう )( )( )けたがな」

千菜(ちな )(いま )(まで )(ぶん )( )(かへ )しも( )( )たりと(おも )へば(よろこ )びも一入(ひとしほ )なりたり。

( )れ、(なに )這入(はい )つてゐるのん?」

仲閒(なかま )( )かれば( )(なが )らも「(わか )らへん」と(こた )ふ。仲閒(なかま )(うち )大抵(たいてい )(くば )られたる(もの )( )(まま )使(つか )ひて、(うま )(すべ )( )かれば(さら )には(おのれ )(ため )調(ととの )(あつら )ふる(こと )( )らざり。(ゆゑ )千菜(ちな )活躍(かつやく )( )( )くして( )り。

(たたか )(をは )りて(みな )(かこ )まれ、( )ちたる(あと )談笑(だんせう )( )てゐる( )(なか )千菜(ちな )( )(はし )椿(つばき )(ひと )りで(かへ )らむと( )(ところ )(とら )へつ。千菜(ちな )(にはか )(うしろ )めたき心地(ここち )(おこ )る。

(なに )(わる )(こと )( )てへんのに、(なん )で……)

(からだ )(うご )かすのは(たの )し。椿(つばき )(おそ )らく(たの )しからず。(この )みを(こと )( )(すなは )(わか )れねばならざる( )( )(あら )ず。仲閒(なかま )にも曾祖父(そうそふ )にも、(おほ )くの(もの )(あた )へられて( )たるが(ゆゑ )(いま )(おのれ )此處(ここ )( )らむ。千菜(ちな )( )(おも )はば、椿(つばき )にも(こゑ )( )けられて( )たる(こと )(おも )( )づ。(おの )(くる )しき(とき )(いつくしみ )を取りつ( )てつ(えら )(とき )( )(あそ )びは(あそ )びにては( )くなりて仕舞(しま )ふと(おも )千菜(ちな )( )( )づ。妙策(めうさく )無之(これなし )


卷末

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