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覺書附紙片斷章(おぼえかきつけしへんだんしゃう )別篇 帝國五人娘

卷末に跳ぶ


荒谷章子「……」

天神橋良子「……」

六條純子「……」

田岡道子「……」

名雪春子「……」

鵬靈「……」

名雪春子「あ、兵卒や」

鵬靈「鵬靈でおす。皆樣宜しう御頼申します」

高山桃子「……」

名雪春子「あ、臺灣の怖い人や――」

荒谷章子「此處で突然惡い報せだが……今(令和三年四月)迄九箇月分の帝國五人娘、全部消えて仕舞つた

田岡道子「……は?」

新章 帝國五人娘 疾風怒濤篇

鵬靈

田岡道子

「いや、何いきなり新章とか言出してゐるのよ!」

荒谷章子

「最う再現も不可能だし、其の中に面白く書けたのも少し存る故殘念だが、此處から再出發だ( )

六條純子

「仕方無いとは言へ、此れでは我々の大半が讀者にはぽつと出の不審者と映つて仕舞ひますは( )

高山桃子

(私の名さへ此中で決まつた位だから喃)

天神橋良子

「しやあ無い。切替へて行く」

名雪春子

「ほな讀者樣、此方がぽつと出の不審者共にございます」

天神橋良子

「いや、切替へ過ぎやらう……言ひ方ア……」

油小路傳子江口美奈子深見定子飯田櫻子アトロピン・パム

油小路傳子

「……」

江口美奈子

「……」

深見定子

「……」

飯田櫻子

「……」

アトロピン・パム

(うち )は五人娘の皆樣より古くから存る者なんでございますけど……」


天神橋良子

「ううむ、なア章、(めん )は大和言葉で何う言うたら良えのンや?」

荒谷章子

「麪?」

天神橋良子

「然う。蕎麥(そば )は文字通り蕎麥を使うて居るから蕎麥やけど、饂飩(うどん )とかスパゲティとかは蕎麥使うて居らんがな。小麥(こむぎ )や」

荒谷章子

「ああ、然う言ふ事乎。其れなら私は「切り」が好いと考へる」

天神橋良子

「キリ?」

荒谷章子

「うむ。蕎麥は正しくは「蕎麥切(そばきり )」と言ふ料理だ。練つて延ばして切つてゐるから喃。其れが約まつてと言ふ乎、單に蕎麥と言へば蕎麥切を指す程に廣まつた」

天神橋良子

「はうはう」

荒谷章子

「身近な食べ物で此れと同じく練つて延ばして切つた物が在る。何か思ひ出せる乎」

天神橋良子

「同じく……?あ、葛切(くずきり )乎」

荒谷章子

「然うだ。片栗粉でマロニーでは思ひ寄らない。現代で單に葛と言へば葛粉の事を言ふが、蕎麥切を蕎麥と言ふのと同じ樣な物で、本當に共通してゐるのは「切り」と言ふ樣の名(さまのな )の方だ。麥で作られた「截麥(きりむぎ )」と言ふ言葉もある。素麪等の事だ」

天神橋良子

「成程。ほな麪と書いて「(きり )」と振つて置けば好え喃。」

荒谷章子

「所が、「麪」と言ふ字は葛粉の樣な「粉」の事で「切」では( )い」

天神橋良子

「えええ」

荒谷章子

「其れで「切麪(きりめん )」と言ふ言葉も存る。其れに手打(てうち )麪は切つてゐるが、手延(てのべ )麪は切らずに延べてゐるから喃」

天神橋良子

「手延べ、て切つてへんから手延べ言ふの乎」

荒谷章子

「と言ふ乎、切る方が後になつて生まれた料理法だ」

天神橋良子

「ほな延べと切りとを一言で表す言葉は無いのん?」

荒谷章子

「心當りは無い喃」

天神橋良子

「くあー!、其れが見附かつたら一發やのに喃ア……」

荒谷章子

「では手延べ麪は「切らず切り」と呼ばう。自動車競走の事を始めは馬無し馬車( HORSELESS CARRIAGE)競べと言つた樣に喃」

天神橋良子

「ええ、車は其れで良え乎も知らんけど、後から生まれた者に本家が變はり種扱ひされるの、好え氣が爲ん」

荒谷章子

「言葉の都落ち……。あ、本家と言へば斯うした料理の黎明期は麥繩(むぎなは )と言ふ物が在つた然うだ。今だに存る所には存る。なら「なは」で良からん乎?「繩料理」「繩物(なはもの )」、と。」

天神橋良子

「繩乎……。確かに切らうが練らうが使へる喃。「( )ア、!今日は朝晝夕(あさひるゆふ )と三食續けて繩物乎い喃(かいな )、丼が食べたいはア」、見たいな」

荒谷章子

「お、良いぞ。早速使ひ熟してゐる。言葉は使つて何程(なんぼ )だ。良し、景氣附けに今夜は酒保で狐蕎麥(きつねそば )からカルボナーラ迄皆で切り( )くしと行かう」

天神橋良子

「「切」は讓らんのや喃……」


名雪春子

「然う言へば「(めん )」て( )いた粉の事なんやと」

田岡道子

「何よ藪から棒に」

名雪春子

「支那料理の材料で甜麪醤(てんめんしやう )言ふ(ひしほ )があるのやけど」

田岡道子

「知つてゐるはよ。横須賀にゐたから。ああ、甜菜の甜に麪で(あま )(こな )(ひしほ )と成る(わけ )( )

名雪春子

「なかなか理解が速い。其の甜麪醤が支那の漢字制限で甜面酱と書かれる羽目になつてゐるらしい」

田岡道子

「「甜き(つら )」……?何、顏でも舐めるの?漢字は言葉其の物なのだから其れを制限して上手く行く訣無いに決まつてゐように。蒼頡(さうけつまなのつくりぬし)の國とも在らう所が愚か喃」

名雪春子

「……」


天神橋良子

「獨り言ちる獨り言ちる獨り言ちる。好し、此れで内もインテリや!」

荒谷章子

「一體何を騷いでゐるんだ?」

天神橋良子

「知らんの乎、獨り言ちるは死語廢語で、此れを使ふ(だけ )でインテリの仲閒入りなんや。今迄賢さうなんに( )められてゐた分目に物見せてやるで」

荒谷章子

「……」

田岡道子

「呆れて物も言へないとは此の事喃。」

鵬靈

「けンども、インテリさんに成る言はれはつても良さん元から( )テどすえ」

田岡道子

「あ」

天神橋良子

チーン

田岡道子

「一言で二三殺されたは喃」

荒谷章子

「先ア、「誰が言葉の生死を決める資格を持ち得む乎」と言ふ問ひに答へられた者は居らんから喃。現代では「死語であるからには死んでゐて貰はねば困る」と生きた言葉を殺して廻る手合もゐるが」

六條純子

「益體も無く( )てるのがインテリとは聞き捨てなりませんは。寧ろ廣く深いインテリゲントが有るからこそ餘計な(こと )は言はず――」

田岡道子

「新手が來たは喃」


鵬靈

「近頃巷では繪文字(ゑもじ )てふ物が流行つてる樣どす喃」

高山桃子

「繪文字?」

鵬靈

「印字と同じ樣に打ち込める繪エの事でおす。色んなんが在りますえ」

高山桃子

「……其れは漢字では( )いの乎」

鵬靈

「ええ?( )うどす( )ア?」

荒谷章子

「🍉🏞🙅📥👞、🍑👇🙅🚶👑」

鵬靈

「ほえほえ?」

高山桃子

「……瓜田不納履、李下不正冠」

荒谷章子

「其の通り」

鵬靈

「は~凄うおす喃ア」

高山桃子

「ふふ」

鵬靈

「ほんで此れは何て讀みますのんえ」

高山桃子

「貴樣は……。……瓜田(くわでんうりのはた)(くつ )( )れず李下(りかすもものもと)(かうむり )(ただ )さず、だ」

鵬靈

「あ!知つて居ります。疑はしい事を( )( )言ふ(こつ )とす喃。でも( )( )て解らはつたん?」

高山桃子

「繪が五つの文と覺しき者が二つ、其れに桃と西瓜と靴とが在る。すもももももももものうちと言ふから喃。其れで判斷した」

鵬靈

「は~」

田岡道子

「丸でホームズの「踊る人形」みたい喃。でも(あらかじ )め答へを知つてゐないと讀めないのは文字として何う乎知ら」

荒谷章子

「其處は數十年も使ひ(こな )れて之けば何とか成りさうだが……」

鵬靈

「あ、はいはいはい!」

荒谷章子

「はいは一回で宜しい。では鵬靈一等卒」

鵬靈

⏮🌞(きのふ )🛣(みち )🔆( )🧒( )🚶‍(さん )👬( )れた👩(おんな )🧑(ひと )💎(たま )を……」

高山桃子

「流石我國は年季が違ふ喃」



天神橋良子

「スーパーカブ第一話「ないないの女の子」

第二話「盜難」」

六條純子

「第三話「復讐」」

田岡道子

「……」

荒谷章子

「スーパーカブ第一話「ないないの女の子」

第二話「ボアアップ」」

田岡道子

「……」

鵬靈

「スーパーカブ第六話「カブ、スーパーモード!」」

田岡道子

「……」

名雪春子

「スーパー――」

田岡道子

(うるさ )い」

名雪春子

「えー」

田岡道子

何う爲(どうせ )(また )要らない所で要らない物を見たんでせう」

荒谷章子

「單車で思ひ出した。戰車の發動機潤滑油の計器に就いての事だが、何處(どこ )ぞの素人軍事物愛好家が「計器が車外に在つて一々出なければ見れないのは無いのは缺陷設計だ」と言つてゐたのに整備兵の一人が怒つて喃。曰く「二撫(ツーストTWO STROKE)發動機は(そもそも )燃料の使用量から潤滑油の補充の時期を測れるから必要の無い」と」

天神橋良子

「彼奴戰車事爲急早口爲喃」


アトロピン・パム

「ヨシ」

深見定子

「わわわわ、私の方がし、しししし新型アしたのに(御( )でたうす。最高す)」

天神橋良子

「逆や逆」

江口美奈子

「なら私は舊舊型哉……」


鵬靈

「電幽人界隈では數年前より小父(をぢ )樣が「幼女の姿を(よそほ )ふと仕草や心迄(こころまで )幼女に成る」と言ふ事例報告が幾つも上がつて居り――」

高山桃子

「小父樣?」

鵬靈

「――當會に於ては「服裝の亂れは心の亂れ」と(のたま )うたが(ため )に或いは(そし )られ或いは(あざけ )られ、甚だしくは職さへ追はれたる全ての大人達の名譽と尊厳との恢復が確認されたる事、

右、決議す」

高山桃子

「?乎?本土の事は良く解らん」

天神橋良子

「解るで、軍人の制服は恰好良う( )いと士氣に關はるさかい喃」

田岡道子

「然う言ふ……事なの乎知ら……」


荒谷章子

「我ガ君何故ニ乎言ト心トヲ違フ」


荒谷章子天神橋良子六條純子
田岡道子名雪春子

「陸軍としては海軍の提案に反對である」


名雪春子

「美少女アニメで貞操觀念の有りさうな音無しい外見の娘が自我を持つのはルールで禁止ツスよ( )

田岡道子

「乎。美少女アニメはルール無用でせう?」

天神橋良子

「うおお!道が此れ知つてゐるなんて、あたしあ嬉しいよ!」

名雪春子

「「博識」や( )

田岡道子

「何をよ。自我を持つ人閒が、慾もあれば魔が差す事もある者こそが貞操を保つ事が立派なんでせう。意思の無い不能が結果的に惡い事爲なかつたなんて美しくも何ともないは。道德の基本ぢや非いの」

天神橋良子

「へ?あ、うん……」

名雪春子

「左樣、文學とは正に然う言ふ生きてゐる人を書く事に存り、文學が三流なら政治も三流。三流の政治の國で養はれる兵など……」

天神橋良子

「あ、裏切つた喃。能う解らんけど一拔け(いちぬけまさきにぬく)爲た事だけは解るで」

田岡道子

「……」

六條純子

「元元、人格設定も特に無い電子遊戲の自作武將上がりの私達が道德や文學やを論ふのも妙ですは喃」

田岡道子

「……鴨喃」

荒谷章子

「私はドッグソルジャーしか讀んで居らん。正美には頑張つて欲しい」


天神橋良子

「若し乎爲て……「どら泣き」て「どら燒き」と掛けて居るん乎」

名雪春子

「今令和三年九月やで」

天神橋良子

「一年越しの眞實」

名雪春子

「眞實乎何う乎は知らぬけど……」

荒谷章子

「銅鑼鳴き……?」


名雪春子

癈兵院( かたはつはもののやしなひどころ)と言へば「無くなつた手足が未だ痛む」幻肢痛言ふ者が有るさうな」

天神橋良子

「解る。内も現時點で天津飯の四妖拳みたいに背中から生えた最う二本の手を動かせる感覺有るもの」

名雪春子

「ええ……。……言はれてみれば。何なら無い尻尾を動かして遠くの物を卷き取れる感覺とかも有る」

天神橋良子

「せやらうせやらう」

荒谷章子

「其の感覺が有るなら、複雜な機械を腦波に依つて動かす時代も樂しみだな。人閒が人閒を超える時は其所乎(そこか )

六條純子

「特別な「使へる」感覺を( )つ者と有たざる者とで格差(いちじる )しい時代になりさうですは喃」

天神橋良子

「暗いで純。未來位明るう考へねあ」


名雪春子

「女が男より强くなると人口が減る。古事記にも書かれてある」

六條純子

「……恥を搔かせてくれましたね、一日に千人を呪ひ殺します」

「おおかはいさうに、ならば產屋を立てる仕事一日五百迄にして一緒にゐてあげるよ、今まで氣附いて上げられなくて御免ね」

「……これはいけるな、ならば一日に二千人を呪ひ殺す!」

「おお……」

天神橋良子

「雜ッ魚!國滅ぶは」

名雪春子

「……今まで氣附いて上げられなくて御免ね、ほな插れるね」

「解つてくれた」

田岡道子

「最ッ低!」

天神橋良子

「先ア女の敵やな……いや結婚はしてゐるしよく言へば熟年夫婦か、けどそれで人口の減少は止められるかも知れん」

田岡道子

「神樣を貶める事を言はないでよ!!」

天神橋良子

「あ?ああ……成程な」

名雪春子

「惡かつたと思うとる」

荒谷章子

「逆に言へば、そんな男ではなかつたと神話に描かれてゐると言ふ事が、我我日本人の在り方の一端を示してゐるな」

六條純子

「神話は「民族にとつて重要なればこそ殘された眞實」ですものね」

田岡道子

「さうよ」

天神橋良子

(純、上手く便乘したな)

荒谷章子

「我我も將官なんてしてゐる場合では非いのではない乎。人口が減ると國力が下がるぞ。產めよ增やせよだ」

六條純子

「我我は架空の人物ですから問題はございませぬは」

田岡道子

「身も蓋も無い」


深見定子

「御父さん、僕、大きくなつたら絶對六六〇立厘(りうりんCUBIC CENTI-METRE)單氣筒ヂーゼル發動蓄電電動車を作るんだ!」

飯田櫻子

「まア此の子つたら」

油小路傳子

「良オし、將來は一立(リットル )五十(キロメートル )目指して御國の支へと成れ」

荒谷章子

「君、今ディーゼルと言つた喃?」

天神橋良子

「戰車の話と違ふ、坐つてをり」


六條純子

「うう、私はしがなく貧しい庶民。穀物を腹一杯召す事位しか樂しみが有りませんは……」

鵬靈

「其れは……氣の毒に。然し戰もずつとは續きませぬ。(やが )血腥(ちなまぐさ )い事も聞かれぬ樣に成り行きます。其の日迄私も一等卒として氣張ります(ゆゑ )共に耐ヘませう!」

六條純子

「うう……鬱屈した日日が餘りにも長く續いて……切めて朝毎に御國の戰果で敵兵何人打ち殺したと言ふ(しらせ )を聞く位しか娯樂が有りませんの……」

鵬靈

「ええ……」

六條純子

「開戦の報を耳にしました時は心が彈んで踊る樣な心地でしたは」

鵬靈

「へ、へえ……」

六條純子

「其れから國や村やの公から櫓の見張りや鐘鳴らしの役を與へられて人生で初めて人と認められたと思へましたの」

鵬靈

「ふ、ふむ……」

六條純子

(くらし )が樂になつて欲しいものでございますけど、何時迄も斯うした甲斐のある日日が續きます樣に願うて居りますの」

鵬靈

「……」


ヹスパアメリケッタ

「……我はヹスパ家のアメリケッタ」

天神橋良子

「何ちふ名前や」

ヹスパアメリケッタ

「亞米利加に在りさうで無い名と言ふ訣でアメリケッタと」


アトロピン・パム

「……二酸化炭素増え過ぎの禍乎……嘘乎實乎知りまへんけど、若しもの時の爲に對策を考へんと明きまへん喃」

荒谷章子

「うむ。では「石油の一滴は血の一滴」と言ふ掛聲で國民に節約を訴へるとせう」

アトロピン・パム

「そんな殺生な。其れやと世の中皆物を買はぬ樣になつて氷河期になつて仕舞ひますえ(此方の商ひが)」

田岡道子

「極端に過ぎるは」

高山桃子

「薪自動車……」

荒谷章子

「木炭自動車は在つたが使ひ勝手が惡かつたらしい喃。機關車も石炭の前は薪を焼べて走らす者があつたが」

六條純子

「使ひ勝手?」

荒谷章子

「火附きと火消しが喃。石油の樣に隨時著けて消してと言ふ訣には行かぬらしい」

天神橋良子

「なアに、野外炊具車も焜爐(こんろ )には始めガソリンで火イ附けて、機が暖まるにつれ灯油の割合を增やして最後は全く灯油だけにするさかいいけるいける。ハイブリッドや!」

六條純子

「一度著けた火が消し辛いなら止る時の尠い高速道路の定路輸送の貨物車に採用しませう」

油小路傳子

「え?三百馬力を薪で?」

鵬靈

「あ、木が育つ時に二酸化炭素を吸ひ込むなら木を增やすのは如何どす?。太平洋に其れを九分方覆ふ位の大きな浮島を作つて木を植えませう。世界的な取組でおすさかいね。乘るしか無い。此のビツグヱーヴに」

アトロピン・パム

「其れや(商機)!流石は五十萬屯艦を發想した御國の人!發想の大きさは亞米利加以上でやす。やはり自然の恵みを頂きますと普段から言うてある文化の方は違ひますな」

鵬靈

「えへへ」

田岡道子ヹスパアメリケッタ

「……」


天神橋良子

「縱書の最中に横書きがしても問題無い乎イ( )

おおお おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
六條純子

「存外問題無ささうですは( )

ちやんと字イの送りの向きも合はせんと筋が通りまへんえ
田岡道子

「其れは然う」

荒谷章子

「民族は文化を守る爲に苦勞して軍隊を拵へてゐるので、其れを否定すると「勝てる國に籍を移して何が惡い」と言ふ國賊丸出しの論に何も言ひ返せぬ樣になるから( )


天神橋良子

「喃ア喃ア、こんな寫眞(しやしん )(うつ )つて居る御姫樣も此の時代(かはや )ボットン便所やつたんや喃。現代から爲たら考へられへんは。絶對に昭和の暮なんかしたうあらへん」

田岡道子

(此奴また己の設定忘れてゐるは喃。大東亞戰爭の將官でせう)

六條純子

「あら、でも戰後は庶民の皆さんは汲取(くみとり )は愚か便所で(からだ )を洗ひ便所で湯に漬かり長居してゐると聞きましたはよ」

天神橋良子

「――」

田岡道子

「……。然うなの?海軍で便器舐めよと言ふのは「衞生狀態は万全を期せ」の意だけど文化として飲水と便所水は分けるは喃」

六條純子

「不潔ですは喃」

荒谷章子

( )まり戰時下と同じだ喃。守るべき文化を一時( )げてでも効率や廉價を優先し、國力を捻り出す。何も珍しい事ではあるまい」

田岡道子

「いや平時にそんな調子でゐて「戰時が永續する」のは全體主義でせう」

名雪春子

湯屋(ゆや )川屋(かはや )も「汚を洗ひ落とす所」として同じく扱ふのが歐米の文化と……」

六條純子

「野蠻ですは喃」

天神橋良子

「内は目覺めた。野蠻な毛唐を打ち拂ひ皇國の光を四方(よも )に注がしめ……」

田岡道子

「夢から覺めた夢で非い事を願ふは」


天神橋良子

「網の上に山程溢れる二次創作の原作無視振りにはほとほと愛想が盡きた‼」

名雪春子

「……」

天神橋良子

「原作の事を何も理解してへんし何の二次作品も結局作品の表面を善くある典型に當嵌めて二流の量産品に( )(なほ )してゐるだけや!!」

名雪春子

「……」

田岡道子

「また何乎見たの喃」

天神橋良子

「内は辛い……原作を知つてゐる程二次創作を見た時に充たされぬ虛しみが心の内に廣がる……。」

田岡道子

「……よく解らないけど創作を眞劍に見る事は良い事よ。見直したは。氣を取直しなさい」

天神橋良子

( )んなにも辛いなら最う……内は原作なんか見ん!元の人格なんか知らん奴等の方が其の絡みも乳繰合ひも性別變換も樂しめる!」

名雪春子

「堕ちたな」

田岡道子

「……」


天神橋良子

「其れをしもつて斯うするんや」


田岡道子

「煩いユ宮殿(ぼそり)……」

荒谷章子 六條純子 名雪春子

「……」

田岡道子

「は――」

天神橋良子

「……」

田岡道子

「……」

天神橋良子

「……内は道の味方やで」

田岡道子

「……ありがと」


名雪春子

「出齒龜が女を殺した時の日記も當然正假名でつけてゐたらうと言ふ言があるけど」

天神橋良子

「出齒龜?覗きの事」

六條純子

「其の元に成つた强姦殺人者ですは喃。覗きもしてゐた樣ですけど」

天神橋良子

「何ちふ奴や」

名雪春子

「其の出齒龜が今に生まれてゐたなら正假名で日記なんか著けてへんと思ふ」

天神橋良子

「其れあ先ア然うや喃」

六條純子

「國語表記に竝々ならぬ情熱を持つ情無い女殺し。想像し難うございますは喃」

荒谷章子

「智識の受容には人格が伴ふから喃。最も、奇妙な運命が人に奇妙な行動をさせる事もあるから判らんが」

天神橋良子

「人格?」

荒谷章子

「人閒、何乎の智識について「判りたくない」とか「解る訣には行かぬ」とか思うたら最う知能の高い低いでは如何にもならん。其れを克服する氣高さや度量や立場やが必要になると言ふ事だ」

天神橋良子

「成程」

荒谷章子

「其んな訣で孔子やソクラテスやが古びる事は今後とも半永久的に無いと言ふ事でもある訣だ。讀書會でも開く乎」

名雪春子

(龜を語つたら藪蛇になつた喃)


田岡道子

「神よ!我は名雪春(なゆきはる )打倒の大願成就の爲に粉骨碎身勵みます。願はくは我が姿御見屆け給へ!」

荒谷章子

「お、恰好良いぞ。其れでこそ日本男兒。否、女子だ」

名雪春子

「神樣!我が田岡道(たをかみち )討伐の願ひ叶へ給へ。唯々只(ただただただ )で叶へ給へ!」

荒谷章子

「……」

天神橋良子

「はいはい神樣やで。うーむ……前者の願ひは斷つても何も罰は無し乎……後者を斷ると逆恨みされさうで面倒臭い喃。よつしや!後者の願ひを叶へたる」

荒谷章子

「……邪神がよ」


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