園(その・ )の内の椛(もみぢ・ )も紅く色附きたり。木蔭(こかげ・ )の長椅子に腰掛けて讀物(よみもの・ )する少女一人在り、疎(まばら・ )なる人通りに目も遣らざれば些か(いささか・ )心に𪺋(あき・ )の趣(おもむき・ )有(あり・ )
(此の本倦きて來た喃。何やら氣イ附いたら人通りも多いし、最う行かう乎喃。……否、もう少し丈、けど……)
頁(ひら・ )を捲らむとしたる時に頭上より枯葉の莖、本の上に落ちて谷に轉がり入りたり。少女枯莖(かれくき・ )を見る事數瞬、軈て(やがて・そのまま)本を閉ぢつ
(神樣も言うてゐやはるは)
少女立上がりて人の流れに入りて失せぬ
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園(その・ )の内の椛(もみぢ・ )も紅く色附きたり。木蔭(こかげ・ )の長椅子に腰掛け讀物(よみもの・ )する乙女一人在りて、疎(まばら・ )なる人通りに目も遣らざれば些か(いささか・ )心に秋の趣(おもむき・ )有(あり・ )
(此の本倦きて來た喃。何やら氣イ附いたら人通りも多いし、最う行かう乎喃。……けど、もう少しだけ)
頁(ひら・ )を捲らむとしたる時に頭上より枯葉の茎本の上に落ちて谷に轉がり入りたり。乙女枯茎を見る事數瞬、軈て(やがて・そのまま)本を閉ぢつ
(神樣も然う言うてゐやはるわ)
乙女立上がりて人の流れに入りて失せぬ